赤城雨風と物語の風

バカバカしくて苛烈な純文学創作

路傍の草

*詩歌や童話を意識しました。

 

 

花の少女と雑草の木こり。

二人は村に暮らしてた。

 

ああ、カワイソウ。

木こりは、キライ。

粗野で、粗暴で、粗相モノ。

ロクデナシだと、噂され。

 

ああ、カワイイ。

少女は、キレイ。

華奢なカラダに、豪華なドレス。

銀雫に、金の果実。

春の村を、飾り付け。

 

ああ、カワイソウ。

花の花弁は、秋には落ちて。

村人達は、もみじに夢中。

落ちた少女は、ひとりきり。

 

少女は大人になり、暫しよくあるように、美しさを置き忘れてしまった。

背が伸びて服のサイズが変わるように、飛び抜けた見目は平凡に溶け入った。

もう誰も褒めてくれない。

もう誰も恵んでくれない。

もう誰も愛してくれない。

甘やかしされた時間が長すぎて、身の回りの事を外注しすぎて、女は何も出来なくて。

村人達は女に目もくれず、別の少女に夢中で追いかけ回した。

 

女は日がな一日、泣いて暮らした。

冬になると、女は床に伏しやせ細った。

今際の時に、見舞うは木こり。ただ一人。

女は朧気な視界と思考の中、雑草の事を考えた。

「雑草は時間の孤独なのね」

「意識ではないのだわ」

「人知れず踏み倒され、人知れず背を伸ばす」

「つまり、時の結晶だわ」

女はそう言い残すと、最後の息を吐き尽くした。

木こりは、一滴だけ涙を流した。

少女の為ではなく、女の為に。

女の為だけに。